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意識研究に大きな変革を

意識の質や内容についての科学的な研究が抱える課題

私たちの意識の質や内容は、構造(例:意味的な構造)やダイナミクス(例:内容の時間変化)といった複雑な特性を持ちます。しかし、そのような特性を生み出す脳のメカニズムについては、科学的な研究があまり進んでいません。その理由として、標準的な意識の実験では、意識を評価する際に被験者の単純な報告(例:ボタン押し)を利用している点が挙げられます。単純な報告では意識の複雑な特性を捉えられません。これを解決するため、言語による報告(ナラティブ)を用いて詳細に意識の特性を評価できることが望ましいといえます。しかし、専門的な知識を持たない人から集めた意識のナラティブは信頼性や詳細さに欠けます。また、ナラティブはそのままだと数値として扱えないので、数値による分析が必要な科学研究で利用することが困難です。

課題を解決するための本領域の研究目的

そこで本領域では、現象学班(代表:新川拓哉)が意識についての豊かで信頼できるナラティブを一般の被験者から取得する実験法を考案します。また、NLP班(代表:谷中瞳)がAIを用いたテキストの分析を取り入れて、意識の特性を反映するナラティブの意味内容を数値化する分析法を開発します。さらに、脳科学班(代表:西田知史)が数値化したナラティブと計測した脳活動の対応関係を分析して、意識の特性を生み出す脳のメカニズムを調べるための手法を考案します。以上の研究目的を達成することで、ナラティブに基づく意識の科学研究の基礎を確立でき、意識研究に大きな変革をもたらすと期待しています。